祭りは窮屈な日常生活からの開放。押し合いもみ合いする内に体中に漲る一体感や、言い知れぬ緊張と喜びがそこにはある。だからこそ祭り人は日頃の衣装をかなぐり捨て、体の命を祭りの中に叩きつける。老いも若きも皆で祈り、歌い、叫び、走り回る。そうする内に心が燃え、体中に異常な力が湧き、表情も変わってくる。参加する全ての人が特殊な雰囲気の中で魂を燃え上がらせていく・・・それが本当の祭りなのだ。
「ザ祭り屋台in姫路」はイベントではあったが、男達の祭りへの情熱に変わりはなかった。 |
5/21(日)朝9時にさしかかる頃、普段では決して目にする事のない光景となった。初夏を彷彿とさせる晴天の下、姫路城から下る大手前通りに、9台の低床トレーラーが9つの村自慢の逞しい屋台を一台づつ乗せて、城を目前に錚錚たる姿を現した。姫路城が静の文化なら、祭り屋台は動の文化とでも言おうか・・・。存在感のある絢爛豪華な屋台と姫路城はとても相性が良かった。
(姫路市飾磨区から集った9つの村:中島・下野田・東堀・都倉・御幸・栄町・玉地・清水・北細江) |

重さ2トンにも及ぶ屋台をトレーラーから降ろすのも練り子達!
実際に練る時の練り子の数は約70人。
一番外側の脇棒に9人(36人)、脇棒の内側にあり屋台の真下に位置する一番長い本棒に7人(28人)、閂(かんぬき)と言われる脇棒・本棒と直角に交わる前後合わせて6本の練り棒に6人。周りの練り子は足場をつくったり、交替して人まわしをしたり、練り合わせの時に押すなどして加勢する。 |

1人1人が神経を集中させ、慎重に役割を果たす。
屋台に係わる全ての人の連帯感をこの後何度も目の当たりにする事となる。 |

”練り子の鼓動”でもある、太鼓の音(ね)。
4人の太鼓打ちはどんなに屋台が傾いても途切らせることなく信じて打ち続ける。
太鼓の音は、腹の底から奮い立つ様な昂揚感を湧き起こす力と、人の心をそぞろにする不思議なものをもっている。太鼓の打ち方一つで屋台練りの全てが決まると言っても過言ではない。太鼓に合わせて屋台を生き物の様に動かす事が太鼓打ちの魅力でもあり、難しいところと太鼓打ちは語る。
それだけに太鼓打ちは、1年を通して古タイヤで練習し、祭りが近付くにつれ、本番に一番いい音が鳴り響くように調整していく。天候による温度・湿度で音合いが変わるため、とても神経を遣うのだ。 |

トレーラー退場後、屋台は大手前通りから三の丸広場に向かい、揚々と練られていく。
その様子から早朝から揚がっていた士気が、更に更に高まっていくのを感じた。 |

16万にのぼった大観衆・・・。
ガードの外から「少しでも近く!」と身を乗り出し、屋台と勇姿をカメラに収めていた。 |

三の丸広場に集結した後、それぞれの練りを所狭しと披露した。
長時間に渡り声を挙げ、力の限り練る姿はとても美しく逞しかった。
★屋台と勇姿を盛り立てる色取り取りのシデ・・・シデは長さ約2m、太さ約5cmの青竹の先に御幣(ごへい)の様な色紙を取り付けた何の変哲もない竹の棒。ところがこの何でもない竹の棒が、屋台を取り囲み林立てし、一斉に波を打って振り動かされると大変な力を発揮するのだ。屋台練りの見事さは、常に屋台に寄り添い、屋台と伴に躍動するシデの魅力に負うところもあり、屋台練りをより絢爛豪華で勇壮に魅せる。またシデを持つのは練り子達の父親。息子たちに練られた屋台を見守り、屋台の練りに合わせて一斉にシデを振り、練り子達を励まし元気づける。言うなれば親子が呼吸を合わせて屋台を練るのである。 |

何台もの屋台が横に肩を並べる「練り合わせ」!脇棒を合わせる為、危険度は更に増す!声と息を合わせ、外側の練り子は頭を内側に入れ、体勢を崩さずに踏ん張る。また屋台が傾いた時、危険を知らせる※棒端の笛の音が緊張感を高める。
前々日に降った雨の為、雑草が入り混じる土に幾度となく足を取られたに違いない。
屋台が落ちるまで、いや降ろすまで力いっぱい屋台を練り、屋台を落とさないのが飾磨恵美酒宮の男達!"台場練り"はもちろんの事、屋台を落とさない粘り強い練りと負けん気の強さも魅力の一つと言えよう。
また地に着いてしまった時は、その瞬間周りにいる練り子達が練り棒に駆け寄り、肩を入れ、肩を替え、諦めずに屋台を練り上げる。「祭りの本当の楽しさは何か」と観客に訴えているかの様であった。
※棒端(ぼうばな)・・・・・本棒や脇棒を押したり、棒端綱を引いたり、また練り子に指示を与えたりと屋台の舵取りをする。機転はもちろんの事、強い力も要するので、自ずと体格のいい人がその役を担う様になる。
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| 台場練り |
港町として栄えた飾磨区では、荷物を肩で担いで船に積み込む仕事をする人々の力自慢、力の見せ所として台場練りが生まれたとされている。
台場(太鼓の下の部分)に潜り込み、24人だけで屋台を長く練るという事によって、村に安泰感を与えると言われている。。 |


『よーいやさぁー・・よーいやさぁーっ!!』の声のもと、地面と水平に浮いたかの様に静止した屋台は、大観衆の歓声と拍手を誘う!
台場の下で足が地面に埋もれそうな感覚に陥る中、奥歯を噛み締める練り子たちには、それが大きな励みとなっているはずだ。 |

三の丸での盛大な練りを収め、トレーラーの待つ元来た大手前通りへ。
早朝、村にある蔵からの練り上げより、長時間に渡り体力が消耗した中、気を抜くことなく大事な屋台をトレーラーに固定した。村に帰ってからもう一仕事が残っている。
当日の強い陽射しが、男達の肌を真っ赤にしていた。練り棒が食い込んで内出血した肩も、彼らには勲章なのだろう・・・。そんな彼らに観衆は皆圧倒され魅せられていた。
まだまだ醒めない中、一息ついた祭り人の群れは姫路城を背に山陽電鉄姫路駅構内へと姿を消した。
数ヶ月のち金木犀の香る頃、またその勇姿に出会える事が楽しみとなった。暑さも無くなり落ち着いた雰囲気の中、執り行われる本番の祭りはまた格別のものに違いない・・・そう想いつつ姫路を後にした。
◎秋祭り
(高砂・曽根天満宮・・・10月13・14日。飾磨・恵美酒宮・・・10月8・9日。)
祭りは伝統を披露する男達の晴れ舞台。しかし祭りを成功させるのは男達だけではなく、女性達もまた陰となって祭りを支えている。祭りになると男達はもちろんの事、親戚などが集まり正月以上の御馳走を作るため、女性達は祭り前日から大わらわなのだ。各家々で作る料理には"このしろ寿司"、"わたり蟹"、"シャコ"などの伝統の味がある。また村の婦人会では、夜肌寒くなってくる頃、温かい豚汁をふるまう。
地元の女性達は、祭り見物に来る人たちをもてなし、料理をふるまうという忙しさがあり、ゆっくりと我が村の屋台練りを見物するという訳にはいかない・・・。その様な中で我が村・我が夫・我が息子に奉仕する女性達にも祭りをむかえる喜びがある。そして練り子達の無事を祈るのである。この様に健気な女性達にも心寄せて頂きたいと思う。 |
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